商品パンフレットに専門用語や、まだなじみのない外来語をどこまで入れてよいのか。そんな質問をいただいたことがあります。詳しそうに見える気もするし、反感を買いそうな気もする。意味を添えるべきかも含めて、バランスが難しいというご相談でした。

僕にも、自分にはちんぷんかんぷんなのに「これはうまくできているな」と感じたパンフレットがあります。工業系のライターさんから、名刺交換の際にいただいたものです。

専門用語の量は、自分の業種と、情報を届けたい相手で変わります。分かりやすく伝えることが必要な仕事もあれば、専門職同士の共通言語で話すことが強みになる仕事もあるんですよね。

僕には読めないパンフレットが、専門職には頼もしく見える

工業系のライターさんは、工場や工業製品、自動化するシステムなどのパンフレットや記事を書く方でした。いただいたパンフレットを読んでも、僕には全然分かりませんでした。

そのパンフレットは、専門分野の専門職に売り込むために作られていました。僕は、仕事とは関係のない機会に仲良くなって、渡していただいただけでした。

工場の方が読んだら、「この人なら、こちらのことを分かってくれそうだ」と感じるんじゃないか。用語から説明する手間が省ける相手は、頼もしいだろうな。僕はそう思ったんです。

同じ業界の人にとって、専門用語は会話をスムーズにする共通言語です。そういう相手に売り込むなら、あえて専門用語をたくさん使うことが必要な場合もあります。

住民へ理解を求めるなら、同じ工場の話でも伝え方が変わる

一方、工場のことを地域の人に理解してもらいたいなら、地域で暮らす人が相手です。僕の家のそばにあったガラスのリサイクル工場は、住民向けのパンフレットを配っていました。

子どもの頃に僕がそのパンフレットを見ていたのは、漫画になっていたからです。何を作っている工場なのか。出ている煙は何なのか。ガラスの破片が道路へ出たり、子どもが遊んだりしないよう、どんな対策をしているのか。そうした内容が分かりやすく説明されていました。

子どもの頃の記憶で、細かな内容はおぼろげです。ただ、難しくなくて分かりやすかった、という記憶は残っています。専門用語以外の方法でも、工場のすごさは伝えられるんですよね。

工業系ライターさんのパンフレットと、住民向けの漫画。どちらも工場に関係する話ですが、読み手に求めていることが違います。専門職に「分かってくれる人だ」と感じてもらうのか、知識のない人に工場のことを理解してもらうのか。言葉を選ぶ前に、ここを決めたいんです。

専門職に届けるなら共通言語を使う。初めて知る人にはやさしく解説する。世界観を味わってもらう場では専門性を感じる言葉が働く。僕のセミナーでは専門用語の直後に解説を添える。

半分以上分からなくても、専門性を感じたバーベキュー

専門用語から、その人の専門性や仕事の世界観を感じる場もあります。僕がバーベキューをしたとき、元バーテンダーの方、レストランのシェフ、パティシエなど、食のプロが集まったことがありました。

お酒の熟成や製法、料理の火入れ、こだわりを保ちながら効率よく提供する技術。話の大半は、僕には理解できませんでした。それでも、聞いていて楽しかったんです。何を言っているか半分以上分からないけれど、すごい人たちだな、と感じていました。

その方たちに、僕のバーベキューを「おいしい」と言っていただけたのは、すごくうれしかったです。専門的な話を聞いて、すごい人たちだと感じていたからこそ、褒めていただけたことをありがたく思いました。

コックさんやバーテンダーさんのように、言葉から伝わる世界観が大切な仕事もあると思うんです。お客様が技術のすべてを理解しなくても、話を聞きながら食べることで、おいしく感じられるのではないか。僕はそう考えています。

もっと詳しく知りたいと聞かれたら、丁寧に答えるでしょう。短く伝えるときには、専門性を感じる言葉をすっきり使うほうが合う仕事もあります。

僕のセミナーでは、専門用語の直後に意味を伝える

僕が開くセミナーは、参加した方に内容を理解してもらうための場です。食のプロが集まった場とは、言葉を使う目的が違います。だから僕は、分かりやすさを大切にしています。

セミナーでは、わざと専門用語をポロッと口にしてから、「あ、ごめんなさい。難しい言葉を使っちゃいました。これはこういう意味です」と、すぐに説明を添えることがあります。用語を使ったら、その意味も伝えるようにしているんです。

いただく感想には、「分かりやすかった」「専門用語をすぐ解説してもらえて助かった」といったものが多くあります。専門用語ばかりのセミナーで分からず、自分がダメなのだと思って落ち込んでいたけれど、僕の説明は理解できた、という趣旨の声をいただいたこともありました。僕の場合は、この分かりやすさが武器だと思っています。

教えたりアドバイスしたりする僕の仕事では、その分野を知らない人がお客様です。「リストマーケティング」という言葉をすでに理解している人は、自分で取り組めるかもしれません。僕が届けたいのは、まだその大切さに気づいていない人なんですよね。

解説を回りくどいと感じるほど詳しい方なら、一人でやっていける方だと思っています。その方にまで、無理に買っていただこうとは思いません。誰に役立つ仕事なのかを考えると、僕が言葉に添えるべき説明も決まってきます。

いまのパンフレットを、誰に渡したいですか

専門用語の量に迷ったら、今作っているパンフレットや発信について、自分の業種は何か、誰に届けたいのかを考えてみてください。専門職に仕事を頼める相手だと感じてもらいたいのか、初めて知る人に内容を理解してもらいたいのか。

僕がセミナーで用語と解説を両方伝えるのは、僕の仕事とお客様に合うからです。このやり方が合うかは、業種によって変わります。場合によっては、専門用語を多く使うほうへ偏ってもいいし、やさしい言葉で伝えるほうへ偏ってもいい。

僕には理解できなかった工業系ライターさんのパンフレットも、専門職に向けたものだと分かると、見え方が変わりました。言葉の難しさを測る相手を間違えないこと。専門職への頼もしさが必要なのか、知識のない人への分かりやすさが必要なのかで、使う言葉は変わるんです。

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