清須市の商工会で、3時間のCanvaセミナーを担当したときのことです。Canvaを知っている方は3名、使ったことがある方は1名。僕が普段使っているツールでも、知っていることを前提には進められませんでした。

実際にスマートフォンを触ってもらうと、アカウント登録の途中に出る「許可しますか」という表示で手が止まります。操作に慣れた人なら通り過ぎるところでも、不慣れな方には「押して大丈夫なのか」が分からない。止まるだけならまだいいんです。「もう無理」と、そこで引き返してしまうんです。

僕は一つずつ説明し、全員の進み具合をそろえました。時間をたっぷりいただけたこともあり、最後には全員がスマートフォンでチラシを作れました。

こうした初歩的な説明に時間を使うと、専門家としての実力は伝わらないのでしょうか。僕はむしろ、質問への答え方を見て信頼してもらえる場面を何度も経験しています。

周りの人は、質問への答え方も見ている

そのCanvaセミナーには、ランディングページや広告運用の専門用語を使う方もいらっしゃいました。その方から「あえて専門用語を使わずに、ビジネスの話をさらさら喋る人は初めて見ました」と言われ、名刺交換を求められたんです。

普段のペライチのセミナーでも、初歩的な質問で進行が止まることはあります。マイナスの評価を受けることも、時々ないとは言いません。それでも大多数の方は「その様子を見て、圭一さんは信頼できると思いました」「あそこまでかみ砕いて説明できるので、逆にすごいスキルのある方なんだと思いました」と受け取ってくださいます。プラス評価につながる場面の方が、圧倒的に多いと感じています。

専門用語をあえて使わずに、専門的なことを説明してあげる。それができると、むしろレベルが高いと思われるんです。だから僕は、こういう質問をいただくと「ラッキー」だと思っています。困っている方に答えながら、周りの方にも僕の仕事を見てもらえるからです。

相手が知りたいのは、高度な使い方とは限らない

以前、スケジュール管理アプリのLifebearについて、パソコンでも使えると伝えたことがありました。すると「全然気づいていませんでした」「パソコンだとものすごく使いやすいですね」と、感謝のメッセージをいただきました。

使える場所を一つ知っただけでも、その方の役に立ったんです。自分にとって当たり前の情報ほど、説明する候補から外してしまいやすい。商工会のセミナーでも、僕の当たり前の基準値が高すぎると改めて痛感しました。もっともっと下げる意識を持たないといけません。

誰を助けたいかが、説明の出発点になる

僕がネットに不慣れな方を支えたいと思うようになったきっかけは、知人に呼ばれた交流会でした。Webの販促をしていると話したら、何人かからホームページを見てほしいと頼まれたんです。

見てみると、業者に依頼したはずのサイトのタイトルが「テスト」のままだったり、工事中の表示が2年ほど放置されていたり、リンクが切れたままだったりしました。自分で作って途中になっているのならともかく、お金を払って依頼したのにこの状態なのかと、衝撃を受けました。

こういう方を助けたい。でも、僕は訪問営業が大嫌いです。どうしようかと考えていたときに、地域でITの活用を支えるペライチサポーターの募集を見つけ、参加しました。小難しいことを小難しいまま受け取れる方は、僕はお客さんにしていません。ネットに不慣れな方を守りたい。その気持ちが、僕の説明の仕方にもつながっています。

質問に答える時間と、全体の進行を両立する

どのような質問に答えるかは、セミナーの対象者によって変わります。これはターゲットの違いです。高度な知識を持つ方が対象なら、その方に合う内容でいい。厳しめのことを言えば、リテラシーの高い方をターゲットにしているのに初歩的な質問が集まるなら、それは募集の仕方が間違っています。そこから変えましょう、という話です。

初心者を対象にするなら、まず相手がどこで困っているのかを聞く。商工会では僕も立て膝になり、目の高さを合わせて話すようにしていました。ただ、回答を続けるとセミナーの進行が遅れそうなときは、「終了後に続きを話してもいいですか」と伝えています。

セミナー会場でスマートフォンを見せながら説明する講師と、その様子を見守る参加者の図

専門性は、相手が分かる説明で伝えられる

次に初歩的な質問を受けたら、相手が止まった画面や言葉を確かめて、そこから説明してみてください。僕は商工会で「これは許可すると押してもらったら大丈夫です」と答えただけで、めちゃくちゃ喜ばれました。自分がすでに知っていることでも、相手にはそれだけ役に立ちます。

Canvaの登録で止まっていた方が、最後には自分でチラシを作れた。僕が届けたかったのは、まさにその変化です。難しい世界へ突っ走るのではなく、簡単なところにあえて目を向けて、嫌な顔ひとつせずかみ砕いて説明する。その仕事ぶりが、専門家としての信頼につながります。

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