僕は、初対面の人が集まる飲み会では、ほとんどしゃべりません。セールスの仕事をしてきた人間がそんなことを言うと、なかなか信じてもらえないんですけどね。

それでも、相手の話を聞くことなら全然問題ありません。「うんうん、そうなんですね」と、まずは聞く。自分のことをうまく話せなくても、相手を理解しようとすることはできます。

営業で話すのが苦手だと感じている方にも、ここは意識してほしいところです。相手の話を丁寧に聞くこと自体が、相手に与える行為になる。自分の思いを伝えようとする前に、信頼を育てるためにできることがあります。

「僕ばかり損していないか」と思っていた

僕も以前は、相手の話ばかり聞いていては、自分が伝えたい思いは届かないと感じていました。「僕ばかり損していませんか」と、正直思っていたんです。

お客様に対しても、こっちは良かれと思っているのに、応えてもらえない。待っていたのに、いつの間にか他社で契約された。お客様のために用意したものにも、感謝してもらえない。そんなことが重なり、「お客様の言っていることは、一切信じません」とまで言ったことがあります。

思いどおりに進まない相手にイライラして、こちらの思いを分かってほしくなる。でも、相手の協力を得たいのなら、まず相手が何を目的に話し、行動しているのかを聞く必要があります。そこが分からなければ、協力を得る糸口すら見つけられません。

自分の思いを話したいのは、相手も同じなんですよね。それを丁寧に聞いてもらえるのは、うれしいことです。だから、聞くことも「ギブ」になる。聞いてばかりで何も渡せていない、というわけではないんです。

「こういうことですね」と、先回りしない

相手の話を聞くときに気をつけたいのは、自分の世界観を通して決めつけないことです。「自分の場合はこうだから」と考えたり、相手がまだ話している途中で「なるほど、こういうことですね」と、さっとまとめたりしていませんか。

僕も、相当意識しないとやってしまいます。良かれと思って先回りしても、相手がまだ言っていないことまで、こちらで決めてしまう。これでは、相手を理解する機会を自分から止めてしまいます。

特に気をつけて聞きたいのは、相手が何を目的に話しているのかです。自分の話をしたい気持ちをぐっとこらえて、相手の思いを聞く。自然にできるとまでは言いません。だからこそ、意識しておきたいんです。

なお、相手を理解しようとすることと、無理に相手へ合わせることは別です。どうしても合わない相手と、関わり続けなければいけないわけではありません。お互いに協力できるところを探すために、まず話を聞くということです。

地域の人が見ていたのは、肩書きより「聞いてくれる人」だった

話を聞くことが、協力を得る近道になる。そのことを強く感じたのが、ペライチの山下さんが取り組んでいた地域創生の現場です。僕も二回ほど見学させてもらい、地域の方との交流のきっかけに、僕のバーベキューを使ってもらったこともありました。

山下さんは、地元の人と仲良くなることに徹していました。一週間ほど滞在して、一切ビジネスの話をせず、地元の人と飲み明かしているような方です。

面白かったのは、地元の方が、山下さんをペライチの会長だと思っていなかったこと。「実はすごい人らしいね。あんたらが来て初めて知ったわ」という感じなんです。地元の方にとっては、自分たちの話を聞いてくれる、気さくな兄ちゃんでした。

そこまで関係を築いていたからこそ、「山下さんが言うなら、間違いないでしょう」と、地域の取り組みが進んでいく。僕はその様子を見て、相手を理解することは、回りくどく見えても、結果として一番早いんだなと感じました。

相手に「この人は自分を理解してくれる」と思ってもらえると、今度は相手が、こちらのことを気にし始める。そのときに、こちらの思いを話せばいいんです。最初から自分の情報を全部届けようとしなくても、話を聞いてもらえる関係はつくれます。


信頼が育った先に、相談しやすい窓口を残す

ただし、話を聞いて仲良くなったことと、その場で成約することは別です。「いつかお願いしますね」で終わることもある。ビジネスとして考えるなら、お客様が動きやすいきっかけも必要です。

相手の話を聞いて理解者としての信頼を育てる。仕事につなぐには連絡しやすい窓口やキャンペーン・無料相談会などのきっかけを用意する。仲良くなることと成約は別。

僕が行っている朝活も、話しかけてもらう窓口の一つかもしれません。SNSでも構いません。連絡しやすい手段を持ち、普段から発信しておく。相手が「そろそろお願いしたいな」と思ったときに、声をかけてもらいやすくするためです。

何も発信していないと、今どこで何をしているのか、忙しいのかどうかも分からず、声をかけづらくなります。さらに、キャンペーンや無料相談会など、こちらから動いてもらうきっかけをつくると、相手も動きやすくなります。

次に人と会うときは、自分の説明を急ぐ前に、相手が何を目的に話しているのかを聞いてみてください。そして、すぐ仕事の話にならなくても、必要になったときに連絡できる窓口を用意しておく。

初対面でほとんどしゃべらない僕でも、相手の話を聞くことはできます。聞くことで理解者としての信頼を育て、お願いしたいと思ったときに声をかけてもらえるようにする。営業で話すのが苦手な今の自分でも、まずは相手の話を聞くところから始められます。

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