今では「楽しく流暢に話しますね」と言っていただけることがあります。けれども、僕はもともとトークが得意だったわけではありません。
住宅営業で訪問をしていた頃には、訪問先から「何を話しているか分からない」と本社へクレームが入ったことが2回ありました。そのくらい、人と話すことに苦手意識があったのです。
それでも、セミナーや商談を続ける中で話せるようになりました。僕にとって、その流暢さを支えるのは「余裕」です。
余裕があるから、相手の話を聞ける
話す内容で頭がいっぱいだと、相手の反応に意識を向けられません。言うべきことを忘れないようにするだけで精一杯になります。
余裕があれば、話を少し脱線させたり、冗談を入れたり、相手の話を聞いて返したりできます。流暢さは、言葉を止めずに出すことだけではありません。相手とやり取りする余白があることです。
苦手な場所で話し続けない
僕は、自分から訪問し、急いでいる人を呼び止めて話すことが苦手でした。相手が「早くしてほしい」と思っている中で、話をコンパクトにまとめるのは今でも得意ではありません。
そこで住宅営業のときには、手紙を使って相手に来てもらう方法へ変えました。自分のために時間を用意してくれた場所なら、僕は話しやすかったからです。
自分から出向いて相手の時間を借りるのか、相手に時間を用意してもらう形にするのか。話す場そのものを選び直すことも、余裕を作る準備の一つでした。

「トーク設計図」を手元に置く
余裕を失う理由には、練習の不足と、何を話すかというゴールが分かっていないことがあります。このうち、話す順番とゴールを外に出すために、僕は営業時代から「トーク設計図」を作っていました。
相手が聞きに来た内容は何か、どの順番で話すか、最後にどのゴールへ向かうか。それを書いたメモを、商談中も手元に置いていました。
作り方は単純です。まず、話したいことを順番を気にせず全部書き出します。そのうえで、並べ替えて上から順に整える。営業時代は紙に書いていましたが、後々便利だったのはデジタルのマインドマップでした。書き出したものを動かして並べ替えられるので、順番を決める作業がそのまま設計図になります。
今なら、話したいことをそのままAIへ入力してまとめてもらい、出てきたものを見ながら「ここは違う」と直していく方法もあります。どの方法でも、やっているのは「全部出して、並べ直す」という同じ作業です。
メモは隠しません。「言い忘れがないように置かせてください」とお客様に伝えていました。次に何を話すか分からなくなれば、「カンニングペーパーを見ますね」と口に出して確認する。それが笑いになることもあり、お客様には「ちゃんと準備してくれている」と受け取ってもらえました。
大切なのは、相手が聞きに来た内容を言い忘れずに届けることです。
本番前に一度、通して話す
設計図を作ったら、次はシミュレーションします。僕もセミナーに不慣れな頃は、一人で最初から最後まで通して話していました。
実際に声に出すと、言葉が足りないところ、説明が速すぎるところ、設計図では必要だと思っていたのに話すと余分に感じる部分が見つかります。一人でも効果はありますし、頼める人がいれば相手役になってもらうこともできます。
住宅営業のときには、次のお客様の家へ向かう車の中で、相手の質問まで一人二役で想定しながら話す練習をしていました。当時はロールプレイをするのが嫌でしたが、今は「あれをやっていなければ、人前で楽しく話せるようにはなっていなかった」と感じています。
まとめ:準備が、話している最中の余裕をつくる
まずは、次に予定している商談やセミナーの内容から、話す流れとゴールを手元の紙へ書いてみてください。本番中も見える場所に置けば、必要なときに一呼吸置いて確認できます。そのうえで一度、声に出して最初から最後まで通してみる。ここまでで準備が整います。
「何を話しているか分からない」と言われていた僕でも、準備によって余裕はつくれました。設計図と通し練習があれば、言い忘れを防ぐだけでなく、相手の話を聞き、やり取りする余白を持てます。流暢さを支えるのは、話し始める前に整えたこの余裕です。

