商談やセミナーの資料に、伝えるべきことをきちんと書いた。それでも、相手に届くとは限りません。

聞き手の注意がこちらへ向いていなければ、どれだけ内容を作り込んでも途中で抜け落ちます。僕が商談やセミナーで意識してきたのは、情報を増やすことより、相手が話を受け取れる状態をつくることでした。

ゴールと時間、数字と完成イメージ、常識を揺らす、必要な制限、声と見せ方の五つを示す図解

最初にゴールと終了時刻を共有する

話し始める前に、僕はその場のゴールを示します。「今日はここまで分かれば大丈夫です」と伝えておくと、聞き手は何を持ち帰ればよいのかを見失いにくくなります。

もう一つ示すのが終了時刻です。「何時何分までお付き合いください」と先に伝え、こちらも決めた時間を越えないようにします。その時間だけはこちらを向いてもらう。話す側と聞く側で、同じ約束を持つためです。

終わりが見えない話を聞き続けるより、「ここまで聞けばいい」と分かる方が集中しやすくなります。資料を開く前に、目的と時間を言葉にするだけでも聞かれ方は変わります。

数字と完成イメージで具体的にする

抽象的な説明が続くと、聞き手は頭の中で意味を組み立てなければなりません。そこで僕は、数にできるものは数字で示します。「五つあります」と言えば、聞き手は全体量と現在地をつかめます。

数字だけで伝わりにくいものは、完成イメージを見せます。住宅営業のときは、コンピューターで作った完成予想図や、近い施工事例の写真を使いました。費用がかかっても模型を作ることもありました。

今の商談やセミナーでは、お客様の声を出します。その商品を買った先に何が起きるのかを、実際に体験した人の言葉で見せられるからです。

図や完成後の姿が見えると、聞き手は説明を自分の頭だけで補わずに済みます。

数字は輪郭をつくり、完成イメージは着地点を見せます。両方を使える場面では、数値をグラフにするなど、一目で関係が分かる形へ整えます。

聞き手の常識を一度揺らす

僕がメルマガ募集ページの作り方を扱ったセミナーでは、冒頭で「ページの中でメルマガの説明をしていませんか」と問いかけました。

メルマガ募集ページなら、メルマガについて説明する。多くの人がそう考えます。けれど、いつか届く情報の説明だけでは、今すぐ登録する必然性が弱くなります。ブログで同じテーマを十分に読めるなら、なおさらです。

そこで、当たり前だと思われている前提へ疑問を置きました。「では、何を伝えればいいのか」という関心が生まれると、続きへ注意が向きます。この記事で扱うのは募集ページの中身ではなく、この「前提を一度外す」という置き方そのものです。

自分の業界で当たり前になっている説明について、反対側から言える事例がないかを探します。実際の経験を伴う切り口なら、聞き手の常識を揺らしながら、その理由まで伝えられます。

必要な制限を先に伝える

住宅営業をしていた頃、話を進めるためにご家族の同席が必要な場面では、「ご主人や親御さんにも来ていただかないと、ここから先の話ができません」と伝えていました。

セミナーでも、「開始5分以内に入らなければ入場を制限します」と先に示すことがあります。参加者は開始時刻を意識して来られます。有料にすることで、支払った分を受け取ろうと集中が高まる場合もあります。

僕は、本当に話を聞きたい人へ的確に届けるために、こうした制限を加えていました。話を受け取れる人がその場に揃っていなければ、内容をどれだけ作り込んでも届きません。参加条件を先に明確にし、話を受け取れる状態をそろえる考え方です。

声の抑揚と見せ方で視線を戻す

大きな声だけ、小さな声だけで話し続けても、聞き手は慣れてしまいます。僕は、大きな声で話している途中に声を落としたり、静かに話しているところで「ここだけ見てください」と強く伝えたりします。

変化があると、聞き手は「何だろう」とこちらへ注意を戻します。重要な部分を強く受け取ってもらうには、声の大きさそのものより、前後との差が効きます。

対面の商談では、見せている資料を自分の方へ少し引くこともありました。少し見にくくすると、相手の注意はこちらへ向きます。声だけでなく、資料との距離や見せる動きも、注意を戻すきっかけになります。


まとめ:聞き手が受け取れる状態まで整える

まずは次の商談やセミナーの冒頭に、「今日は何が分かればよいか」「何時に終わるか」の二文を用意してみてください。手元の資料はそのままでも、冒頭の二文から始められます。

そのうえで、数字や完成イメージ、理由のある意外性、参加条件、声と見せ方の変化から、その場に合うものを加えます。伝える内容を作り込むだけでなく、相手が受け取れる状態まで設計する。そこまでが、話を届ける準備です。

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