福岡へ行ったとき、人気のお土産店に長い列ができていました。商品が補充されると人が集まり、どんどん売れていく。僕もそこで、どら焼きのようなお菓子を買って帰りました。

そのお土産を福岡に詳しい知人へ見せると、「おいしいから好きだけれど、かなり割高ですよね」という反応が返ってきました。僕はそこで初めて、自分で食べるための買い物と、誰かへ渡すお土産では、価格の見え方が違うことに気づいたのです。

お土産を選んだ僕が考えていたのは、渡した相手が喜んでくれるか、福岡へ行ったことが伝わるかでした。その役割を果たす商品を選んでいたのです。

通常の商品は「お値打ちか」で判断される

ここからは、買う側で気づいたことを、売る側の設計として考えます。僕は高額商品の売り方を教えていますが、お客様が「高いけれど買おう」と思っているわけではありません。高い価格を払っても、それ以上の価値がある。自分にとってはお値打ちだと感じるから買います。

値下げを求められたなら、お客様には今の価格ほどの価値がまだ見えていないということです。通常の買い物では、安さやお値打ちさが判断軸になります。

贈り物では、「相手に喜んでもらいたい」という目的が先に立ちます。ここが変わると、同じ価格でも受け止め方が変わります。

商品購入と贈答で異なる判断軸を比較した図解

僕は高級品を「自分へのご褒美」にできなかった

僕が営業マンだった頃、研修で「トップセールスになったら何を買いたいか」を考える機会がありました。周りはスポーツカーやフェラーリの話で盛り上がっています。

僕はそこにほとんど気持ちが動きませんでした。全身を高級ブランドで固める人より、ユニクロを格好よく着こなす人のほうに憧れます。高価なものを自分へのご褒美にしても、僕の仕事の動機にはならなかったのです。

自分用の高級品に価値を感じるかどうかは、人によって大きく違います。売る側から見れば、価格が高いことだけでは、買う理由にはならないということです。

一方、誰かを喜ばせるためなら、僕自身の選び方も変わります。その違いがはっきり出たのが、朝活の仲間へコーヒーを贈ったときでした。

高級コーヒーだから、贈り物に選んだ

僕が参加していた朝活が2周年を迎えた頃、仲間の一人が上質なコーヒーを販売し始めました。僕はそのコーヒーを、欲しい人への抽選プレゼントにしようと考え、まとめて購入したのです。

新商品を応援したい気持ちもありました。ただ、贈り物として選んだ理由は、それだけではありません。普段は自分で買わないような高級コーヒーなら、受け取った人に喜んでもらえると思ったからです。

もし「安くてたくさん入っていること」が一番の売りの商品だったら、同じ企画には選ばなかったかもしれません。贈る場面では、お値打ちさよりも「自分では普段選ばない、良いもの」であることが意味を持ちます。

ただし、過度に高いものは選ばれません。贈る側にもお財布事情があります。その事情が許すなら、できるだけ良いものを買いたい。その範囲で、相手が喜ぶものを選びます。


物販でなくても「贈れる形」は考えられる

お菓子やコーヒーなら、ギフトセットを作るイメージはすぐ湧きます。母の日、父の日、敬老の日など、誰かへ渡す理由がある時期に合わせることもできます。メッセージカードを付けたり、贈り物として発送できるようにしたりすれば、相手を思って選んだことがさらに伝わります。

では、講座やコミュニティのようなデジタル商品はどうでしょうか。僕は、自分が運営するコミュニティ「ゼロリス」に3カ月参加できるギフトカードを作り、カードのQRコードから招待できないかと考えました。

ゼロリスのギフトカードは構想段階で、販売実績はありません。正直、僕自身も売れる自信はありませんでした。ただ、可能性はゼロではない。形のない商品でも、「この人に体験してほしい」と思ってもらえるなら、贈り物に変えられるかもしれません。

商品をギフトとして選ばれる形にするには、誰が、どんな相手を喜ばせるために買うのかを考え、その場面に合う渡し方を用意します。

購入者本人が使う高額商品について、価格の理由と信頼をどう伝えるかは「高額商品を売るには?売り込まずに選ばれる販売導線の作り方」で解説しています。

まず一つの商品に「誰へ贈るか」を加える

今扱っている商品の中から、一つだけ選んでみてください。その商品を自分で使う人ではなく、誰かへ贈る人が買うとしたら、何が必要になるでしょうか。

商品名の前に「大切な〇〇さんへのプレゼントに」と置いてみる。そこで不自然に感じるなら、ギフト用の組み合わせ、メッセージ、包装、相手へ直接届ける方法のどれが足りないかを考えます。

福岡のお土産が「割高」と言われながら列を作っていたのは、自分で食べるためではなく、誰かへ渡すために選ばれていたからです。今ある一つの商品から始められます。値下げを考える前に、「この商品を誰かへ贈りたいと思えるか」を問い直してみてください。贈り相手と渡す場面が見えれば、販売の選択肢が増えます。

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