住宅営業をしていた頃、商談へ出る前には「今回はどうするつもりなんだ。どういう段取りをかけているんだ」と上司に聞かれ、戻れば「どうだった。なぜうまくいかなかったんだ」と問われていました。
営業の世界は、売っている人ほど偉い。売っている人ほど出世が早い。そして、売っている人が必ずしも人格者とは限りません。だから上司が基本的に怖い、そういう世界です。商談に同席されて「お前、これあかんぞ」と言われることもありました。今なら勉強になったと思えますが、当時は嫌で仕方がなかったんですよね。
上司は優しくないので、「5つのポイント」なんて親切な言われ方はしていません。「お前、準備不足やぞ」「それ怠慢だよな」「やるべきことをやってなかったから、うまくいかなかったんだよな」。そうやって突き詰められながら、いつもここを怒られていたな、という突っ込まれどころが5つありました。かつての僕が、毎回やっていたことです。
1. 終わりを決めないまま話し始める
お客様と話すとき、今回は何をゴールにして話すのかを決めて、臨んでいますか。ゴールが決まっていなければ、そこへ向かう道筋すら考えられないはずです。まずゴールを決めましょう。
かつての僕は、お客様がどんな反応をするか分からないのだから、その場で臨機応変に進めるしかない、と思っていました。「とりあえず行ってきます」という気持ちは、よく分かります。
でも、ゴールも決めず、売るものも決めていない状態で臨むと、上司からは「待て。それだったらアポイントをずらせ」と言われていました。お客様としっかり話せる機会は、そう数多くは作れません。その一回一回が、とても重要です。ゴールを決めないまま使ってしまうのは、ものすごくもったいないんです。
準備する時間がない、というのは理由になりません。こちらの段取りが整うまで、お客様が待ってくれるわけがないからです。「あなたをセールスする準備が完璧に整いましたので、どうぞお越しください」なんて商談はありません。セールスは基本お客様都合で、こちらの都合を無視して突発的に起こるものでもある。どれだけ忙しくても、どれだけ時間がなくても、準備はしておく。最初は不慣れで時間がかかりますが、経験を積めば短縮できます。
まずは、その商談で目指す成果を一つ決めてください。「予定していた話を全部しゃべる」という自己完結の目標ではなく、成果としての目標です。慣れてくれば二つ三つと出てくるかもしれませんが、まずは一つ。今日この瞬間、自分は何のために、何を目的にしてこの場に立っているのか。ここを決めずに話し始めると、しゃべっているうちに「私は何をしゃべっているんだろう」と自分で迷子になり、焦りが生まれて言葉が止まります。「とりあえず行ってきます」という人は意外と多いので、気をつけてください。
2. 質問を分かったつもりで遮る
商談で焦っていると、お客様の質問を最後まで聞かず、「なるほど、こういうことですね」と先回りしてしまうことがあります。
その解釈が違っていても、お客様は「違います」と言いにくいんです。こちらに気を使って「そうです」と答え、本当は聞きたかったことを心にしまい込んでしまう。そうなるとお客様は、疑問を抱えたまま集中力のない状態で商談を聞き、上の空で終わります。もうリカバリーが効きません。
僕は「こういう解釈で合っていますか」と、問いかける形にするよう心がけています。自分が運営するゼロリスで質問へ答えるときも、「それは、こういうことでしょうか。もしそうなら、こうです」と返すことが多いんです。
そうじゃない可能性を捨てない。相手が訂正できる状態にしてから答える、ということです。「お客様の言わんとすることを先回りして答えられたぞ」というのは、間違った自信です。そこでお客様が「この人には相談できないな」と閉じてしまったら、もう何もできなくなります。
3. 自分の専門分野を調べていない
これは、僕自身に苦い失敗があります。住宅営業をしていた頃、断熱材の「グラスウール」を、ずっと「ガラスウール」と言っていた時期がありました。
あるお客様から「ガラスウールって言うんですね。初めて聞きました」と言われたんです。最初は、何だか小馬鹿にされたように感じました。でも後から調べると、間違っていたのは僕の方でした。
そのお客様とは、それ以降、会話することがなくなりました。こういうところで、信頼は一気に損なわれます。
もちろん、勉強していても、お客様の方が新しい情報を知っている場面はあります。僕もセミナーでペライチの話をしていて、新機能が増えたことを参加者から教えていただいた経験があります。
そんなときは、「そうなんですね。ペライチさんは動きが早いですよね、僕は知りませんでした」と認める。しどろもどろにならず、堂々と構えて対応する。専門外のことなら「WordPressは分かりません、ごめんなさい」で構いません。でも、自分の専門分野については、常に勉強し続けてください。その分野でお客様のほうが物知りだと、セールスはよっぽどうまくいきません。
4. 自信がないまま接する
僕は「自信の演出」を、セールステクニックというよりセールスのマナーだと思っています。お客様にお金やお時間を支払っていただくことをお願いする立場ですから、頼ってもらえる存在になって初めて、セールスは成り立ちます。自信の演出には、徹底的にこだわってください。
「僕は初心者なので、ごめんなさいね」
僕も、かつては言いまくっていたので人のことは言えません。言ってしまう気持ちも分かります。それでも、言ったらそこで全てが終わるとすら思ったほうがいいです。ボウリングやゴルフで「英語をしゃべったらアウト」という遊びがありますよね。あのNGワードと同じで、口にした瞬間に一万円を誰かに渡すくらいのつもりでいる。それくらい意識しないと、出てきてしまうんです。僕が今は言わなくなったのも、素質でも何でもなく訓練の賜物です。もともと基本はネガティブな人間ですから。
自分の専門として伝える話は、堂々と伝える。その場で「間違っているかもしれないんですけどね、どうなんでしょうね」とは言わない。もし後から誤りが分かったなら、「あのときは堂々としゃべっていましたが、間違っていました。こちらが正しい内容です」と訂正しに行けばいいんです。自信は言い回しや立ち振る舞いだけでなく、服装や髪型にも出ます。最初は無理にでも演出してください。
一方で、先ほどのように、お客様の質問を決めつけて話を遮ることは、自信とは別です。何を聞きたいのかは確かめながら、自分が答えるべきことをはっきり答える。その両方を意識しています。
5. お客様の期待を満たすだけで終える
お客様に言われたものを、言われたとおりに用意しました。これでは基本的に、セールスは決まりません。決まったとしても価格競争に巻き込まれて、すごく低い利益率での成約になります。「あなたと同じ条件の他社さんもいるんですよね。だから安いところにお願いしようと思うんですけど、御社はいくら割り引けますか」。そういう話になっていきます。
満足じゃなくて感動を目指せ。僕はよく、そういう言い方をしていました。お客様から「満足です」と言われるのは、意味としては不満足に近いんです。お客様は、思っていた以上のものが来たと感じたときに、初めて感情が動きます。人は感情でものを買う、とよく言いますよね。つまり、感情を動かさないといけない。感情が動くことを、感動と言うわけです。
僕が商談前によく問われたのは、「お客様がびっくりするポイントは、どこなんだ」でした。
商談の前に「どんな商談をするんだ、プレゼンを見せろ」と言われ、場合によってはロールプレイもする。その中で「お客さんの感動ポイントはどこなんだ」と、よく詰められていました。お客様が求めていたものを満たすだけでなく、「思っていた以上だ」と感じるところまで考えられているか、という問いです。
別に、涙を流させろという話ではありません。それでも、本当に感情を動かす提案や話をしないと、基本的に人は動きません。お客様の想定は、どんどん超えていきましょう。感動させましょう。

次の商談で、何を変えるか
終わりを決めずに挑んでいませんか。分かった気になって、お客様の質問や相談を遮っていませんか。そもそもリサーチ不足、勉強不足ではありませんか。自信がなく接していませんか。お客様の満足止まりで、提案が止まっていませんか。
いきなり全部やるのは厳しいかもしれません。それでも、この5つのポイントは本当に常に意識してほしいんです。何かに取り組むときは常にこの5つを掲げて、セールスページのリライトでも、これから取り組む商談でも、そこに臨んでいただく。かなりクオリティが上がっていくと思いますので、ぜひ心がけてみてください。

