住宅営業をしていた頃、僕はお客様への断り方を何度もシミュレーションしました。こう言われたら、こう切り返そう。ところが実際にお客様の顔を見ると、用意した理屈どおりにはいかないんです。

「もうちょっと検討したいのに」という顔をされる。怒りをあらわにされることもある。何ヶ月もかけて仲良くなったのに、最後は険悪なムードで終わることもありました。これは、しんどい。

それで僕が変えたのは、決断していただくタイミングや条件を、最初に共有することでした。断る場面になってから、突然こちらのルールを持ち出さない。商談や依頼を断るのが苦手な方には、この準備をしてほしいんです。

商談の始めに、決断までの流れを伝える

住宅は数千万円の買い物です。お客様が、いろいろな間取りや選択肢を知り、十分に検討したいと思うのは当然ですよね。一方で、こちらにも、いつ契約の判断をいただくのかを決めて進める必要がありました。

そこで僕は、相談を始める段階で、これからの商談がどう進むのかをお伝えしていました。たとえば、今日はプランのご要望を伺う。1週間後にラフプランをお見せし、2週間後にはそれをもとに具体的な設計図で検討する。3週間後に見積もりを出し、建物の形と金額が分かったところで、4週間後に契約するかどうかを決めていただく、という流れです。

これは、僕が住宅営業で使っていた進め方の例です。大切なのは、この日数をそのまま使うことではなく、どんな検討を経て、いつ決めるのかを、最初からお客様と共有しておくことなんです。

そうすると、お客様にも「そのときまでに、決められるように準備しておこう」と考えていただけます。不安や問題点を検討する時間も、商談の流れの中に持てるわけです。いざ判断をお願いするときには、以前お約束したとおり、ここでご決断いただきたいのですが、いかがですか、と話せます。

口頭だけでなく、紙でも渡していた

僕は、この予定を口でお話しするだけでなく、紙でもお渡ししていました。1週間後はここまで、2週間後はここまで、そして4週間後が決断のタイミング。先の流れが分かるようにしていたんです。

これで、僕自身が断りやすくなっただけでなく、商談のスケジュールもコントロールしやすくなりました。お客様も、その流れに沿って動こうとしてくださるからです。こちらが想定していた工数やタイミングで商談を進めることにもつながりました。

反対に、その場で初めて条件を伝えると、お客様はびっくりします。その顔が、断るのが苦手な僕にはグサグサ刺さるんですよね。「ちょっと時間をもらってもいいですか」となれば、こちらは返事を聞き続け、お客様も返さないといけないと思い続ける。そんな宙ぶらりんな関係を長引かせたくないんです。

条件をその場で突然伝えると相手が驚く。始める前に流れ・期限・対象を共有すれば、相手も心の準備ができる。口頭だけでなく紙でも渡す。

相談時間や参加対象も、始める前に共有する

商談の日程と同じように、相談や講座でも、始まる前に共有できる条件があります。僕は60分のスポットコンサルなら、最初に「今日は60分ですね」と時間を確認します。こちらからもう少し伝えたいと思って延ばすことはありますが、相手の都合で、こちらに不満がたまるような延ばし方はしません。

僕が運営するリストマーケティングのコミュニティ「ゼロリス」でも、参加していただきたい方を先に示してきました。初心者が、自分の商売でリストマーケティングを実践するための場です。人に教えるための研究や、クライアントのための情報収集を目的に参加する方はお断りする、と明記していたんです。

入っていただいてから断ろうとすると、お互いに心がすり減ります。だから、参加前に伝える。対象や扱う内容が分かっていれば、そもそも場に合わない相談が起きにくくなりますし、断る必要があるときも、あらかじめ示した条件に戻ってお話しできます。

初心者向けのセミナーでも、僕は扱う範囲を最初にお伝えします。水に慣れるためのスイミングスクールで、いきなりクロールのタイムを0.1秒縮める方法を聞かれても困る、というようなことです。何を聞ける場なのかが、相手にも分かるようにしておくんです。

メルマガの入口は広くしている。その理由

僕が入口を広く取っているのは、メルマガです。メルマガはシステムだからです。

入口をすべて無料の個別相談にして、一人ずつ悩みを聞き、どこかで「今日はここまでです。その先は契約してください」と伝え続ける。僕には、毎回それをするのは精神的に持たないと思います。

メルマガなら、こちらが配信する内容を見て、合わないと思った方は、ご自身で配信を解除できます。対面でお断りする必要がないので、僕にとってはストレスが少ないんです。

僕は、配信解除の通知も、その都度届かないように設定しています。解除数は一定期間ごとにまとめてデータで見ますが、通知が来るたびに反応する形にはしていません。なお、有料コミュニティの退会申請は、すぐに対応する必要があるので別です。

直接やり取りする商談や相談では、条件を先に伝える。広く知っていただく入口には、メルマガのような仕組みを使う。断るのが苦手だと分かっているからこそ、僕は仕事の受け方も含めて考えています。


一度困った条件を、次の案内に入れておく

最初から、ありとあらゆる状況を想定するのは難しいです。僕も、いろいろな失敗をして、同じことで困らないように対策してきました。逆に、条件を細かく厳しくしすぎると、受注の機会を失いすぎることもあります。そこは、仕事の内容に合わせて調整が必要です。

まずは、一度対応に困った商談や依頼を思い出してください。今使っている案内に、後から伝えていた条件を書き足すところから始められます。流れ、期限、対象の条件を、次のお客様へ先に共有できないか、見直してみてほしいんです。

僕は、断る瞬間のトーク力に任せることは、絶対にしないと決めています。住宅営業で最後に険悪になってしまった経験があるからこそ、最初に、判断するまでの流れをお伝えする。相手にも心の準備をしていただき、約束した条件に戻って話せるようにしておく。それが、断るのが苦手な僕が続けてきた準備です。

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