車の鍵をなくし、作り直すのに7万〜8万円はかかるかもしれない。そう覚悟して探し続けた鍵が、ようやく見つかりました。ところが僕は、その後に約8万円の買い物をしていたんです。
「さっきまで、8万円浮いたって喜んでなかったか?」。自分でもそう思うのに、買い物をしたことは後悔していませんでした。
この気持ちの変化をたどると、商品を案内するランディングページ(LP)で、なぜ「こんなお悩みありませんか」と問いかけ、購入後の未来を伝えるのかが見えてきます。どのページにもあるから、と形だけ埋めてしまいやすい部分です。
鍵をなくして、後回しにしていたスペアキーを作った
2023年のゴールデンウィークのことです。僕は大好きなホンダのオデッセイの鍵をなくしました。中古で買った車で、購入したときからスペアキーはありませんでした。
なくしたら困ることは、最初から分かっていたんですよ。でも、「まさか自分が」と思い、作らずに乗り続けていました。その「まさか」が起きて、車を動かせなくなったわけです。
近所の鍵屋さんに電話しても、僕の車の鍵は作れないと断られる。ネットで調べた料金に出張費も加わると、7万〜8万円はかかるのではないか。連休中なら、もっと高くなるかもしれない。そう考えていました。これは当時の僕の見込みで、実際に請求された金額ではありません。
しばらく車を動かせなくても生活はできたので、連休中は探し、見つからなければ平日に頼もうと決めました。そして5月5日、古紙回収に出す段ボールをまとめた、その段ボールの中から鍵が出てきたんです。あんなところ、よく見つけたな、自分。
鍵が戻ったからといって、「じゃあ、もう大丈夫」とはなりませんでした。二度とこんなことはごめんだ。対応できる鍵屋さんを教えてもらい、今度は元の鍵を持っていって、1万5,000円でスペアキーを作りました。
なくす前にこの金額を知っていたら、「使うかどうか分からない鍵に1万5,000円か」と、なおさら後回しにしていたと思います。ところが実際に困ったあとは、支払ってでも用意したかった。同じスペアキーでも、僕の中での必要性が変わっていたんです。
「こんなお悩みありませんか」は、困る場面を認識してもらう部分
僕がLPを見ると、冒頭に悩みを書き並べてはいるけれど、「ほかのページにもあるから、とりあえず置いた」という印象を受けることがあります。でも、本来ここは、お客様に自分の困りごとを具体的に認識していただくための部分です。
僕の場合、「スペアキーがない」という状態は前から知っていました。けれど、車に乗れず、対応してくれるお店を探し、高額な出費を覚悟するところまでは、自分のこととして考えていなかった。必要性を知っていることと、放っておけないと感じることには、これだけの差がありました。
講座やサービスのように、「あったら嬉しいけれど、今日なくても何とかなる」と受け取られる商品は、購入を先延ばしにされやすいものです。だから、悩みの名前を並べるところで終えず、相手がどんな場面で困っているのか、そのままだと何に困るのかまで伝える必要があると、僕は改めて感じました。
ただ、「怖いですよね」と悪い未来ばかり膨らませれば、煽りになってしまいます。お客様が抱えている問題を具体的にすることと、怖がらせる表現を強めることは、分けて考えたいところです。
また、僕は普段のメルマガでも、放っておくと困ることを繰り返しお伝えしています。例えば、自分の発信先のアカウントがなくなったらどうするか、という問題です。LPだけですべてを伝えようとすると、文章が長くなり、表現も強くなりがちだからです。
鍵が見つかったら、「お金が増えた」気になっていた
さて、スペアキーの1万5,000円だけなら、約8万円の買い物にはなりません。残りは、前から欲しかった約6万円のスピーカーでした。
実は、すでにそこそこ良いスピーカーを持っていたんです。買い替えても、音が恐ろしく変わるわけではないだろう。それなら今は買わなくてもいいか、と見送っていました。
それを買う気になったのは、鍵を作り直すために払うつもりだったお金を、払わずに済んだからでした。頭の中では、「7万〜8万円儲かった!」となっていたんです。いや、儲かっていません。予定していた出費がなくなっただけで、収入は増えていないんですよ。
それでも、「浮いたお金で買うならいいか」と感じていました。当時のAmazonのゴールデンウィークキャンペーンで、合計1万ポイントが戻る条件もありました。ただ、僕自身が大きかったと感じたのは、お金が生まれたような錯覚のほうです。
こうしてスペアキーとスピーカーを買い、結局は約8万円を使いました。鍵をなくした後始末に同じくらい払う未来を覚悟していたのに、実際には安心のための備えと、欲しかったものが手に入る。その支出は、僕にとって清々しい買い物になっていました。

ベネフィットは、手に入れたあとの自分を想像してもらう
スピーカーの買い物は、鍵が見つかったことによる、少し特殊な例です。商品の良さを説明されて、それだけで買ったわけではありません。僕が何にお金を使うつもりだったかによって、同じ出費の受け止め方が変わったのでした。
LPで正面から取り組むべきなのは、商品を手に入れたあとに、お客様がどうなれるかを具体的に想像していただくことです。これが、ベネフィットを伝えるときに力を入れたいところです。
良いことを言葉として提示するだけでなく、「このお金を払えば、自分はこんな未来を手に入れられる」と感じてもらう。僕は、手に入れたあとの自分を思い描けるところまで伝えるのが大切だと考えています。
自分の商品のベネフィットをまだ言葉にできていない場合は、ベネフィットの見つけ方を解説した記事も参考にしてください。
買う直前まで迷った人には、別の選択肢が喜ばれることもある
ベネフィットを伝えても、真剣に迷った末に購入しないお客様はいらっしゃいます。その方へ、次に価格を抑えた別の商品を案内する方法を、ダウンセルといいます。
例えば、5万円を払うつもりでぎりぎりまで考えていた人に、3万円の商品を案内する。すると、「それなら2万円得した」と受け止めてもらえることがあります。これは価格の例ですが、払う覚悟をしていた金額が基準になる点で、僕のスピーカーの買い物と近い心理です。
ここで想定しているのは、もともとの商品を本気で検討していたお客様です。最初から安い商品へ誘導するために、高い商品を見せるわけではありません。まずは本命の商品と、その商品で得られる未来をしっかり伝える。そのうえで、踏み切れなかった方に別の選択肢を用意する、という順番です。
セールスは、気持ちよく決めてもらうために使う
こうした話をすると、「お客様に騙されたと思われませんか」と聞かれることがあります。でも僕は、似た手法を使って販売してきた中で、むしろ晴れ晴れとした表情で買ってくださるお客様を見てきました。
住宅営業で扱っていたのは、35年間、毎月9万円といったローンを組んでいただく、大きな買い物です。それでも、お客様は笑顔で決めてくださり、その後も年賀状をいただく関係が続いていました。支払う額の大きさだけで、買い物の気持ちが決まるわけではないと感じます。
僕は、セールステクニックはお客様のストレスを減らすために存在するとすら思っています。その前提は、自分の商品がお客様にとってプラスになり、良い未来を届けられると考えて売っていることです。
まずは、今あるLPから見直せます。「こんなお悩みありませんか」の中に、お客様が困る場面まで書かれているかを見てください。続いて、ベネフィットの部分を読み、購入後の自分を想像できる説明になっているかを確かめます。型の欄が埋まっているかだけでは、その役割を果たしているかは分かりません。
僕が鍵をなくして気づいたのは、同じ約8万円でも、「困ったことの後始末」と「安心や欲しかったものを手に入れる買い物」では、気持ちがまるで違うということでした。LPでも、困りごとと購入後の未来を、お客様自身が実感できる言葉で伝える。そこで初めて、いつもの「お悩み」とベネフィットが、選ぶための判断材料になります。
